1.隣人トラブルがある土地を、購入するとき、売却する時は要注意
近隣や隣人とのトラブルをかかえている土地を不動産売買するときは要注意です。
中古一戸建ての選び方や購入の仕方などの本は沢山本屋で並んでいますが、隣人トラブルについて書かれていないことも多いです。
一戸建てはマンションに比べて、購入する際に確かめておかなければいけない点は多いです。
特に東京都内のように狭小地や袋地、密集地は隣地との問題をかかえてる場合があります。
気を付けるのはこれから土地を購入する方だけではありません。古家付き土地を売却しようとしてる方も、要注意です。
隣地との境界が確定されていない、建物一部が越境している、配管が隣地を通過している、私道持分が無い、敷地内の余分スペースがなく建物が建てられている場合には、
懸念材料があるということで売りづらくなります。
こういう問題は売却する前に解消しておきたいところです。
1-1.敷地いっぱいに建てられてる家
土地建物を建築する際には、地域ごとに建ぺい率がきまっています。敷地面積に対して30%から80%の割合で建築しなければいけません。
しかし、敷地いっぱいに建てられてる家があります。そのような家は無断増築をしてしまった、変形地であるゆえに敷地の片側いっぱいに建ててしまった、または建築以後に一部土地を売ってしまった可能性があります。
敷地いっぱいに家をたてられていると、隣地の人からしたら迷惑であり、うっとおしく思われることがあります。
防犯上や防災上の問題、リフォームや建て替え時に問題がでてくるからです。
敷地いっぱいに家をたててる人が、外壁塗装などのリフォームをしたい時に、足場を設置するために土地を借りたいと隣人に申し出ても嫌な顔をされてしまうでしょう。
民法第234条では隣地境界から50cm以上離れるように明記してあります。
民法第234条(境界線付近の建築の制限)
・建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
・前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
ただし、建築基準法では下記のように明記されています。
建築基準法第65条(隣地境界線に接する外壁)
・防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
平成28年時点では、建築基準法と民法では、隣地境界線に関しては建築基準法が優先された判決が出ています。つまり防火地域、準防火地域では耐火構造であれば外壁を境界線に接して建築ができるのです。
どちらにしても、隣地の承諾や合意を得て敷地境界ぎりぎりに家を建てたとして、リフォーム時に足場を組めないことがあり、敷地境界ぎりぎりに家を建てることはお勧めはできません。
敷地いっぱいに建てられてる家で問題となってくるるのが、建築当時から数十年たったあとのリフォーム工事のときです。
どちらの家も所有者がかわっていれば、当時の建築事情や当時の所有者の話し合いなど知る由もないこともあります。
建築当時の隣人とは所有者がかわっていて、リフォーム時に足場を組ませない等、強硬な態度になってしまってることもあります。
1-2.配管が隣地の下を通過している
配管が隣地の下を通過していることはあります。隣地の方からしたら、建て替えをする時に困るかもしれないから、配管を自分の敷地内や持分がある通路に移設してほしいと思うでしょう。
建築時には隣地の方から承諾や同意をとって建築してる可能性も高く、又は
袋地の所有者であれば、移設しようにも私道持分が無く、どうしようもない場合だってあります。他人の土地の利用を最も他人にとって損害が少ない方法であれば裁判所でも容認されます。
下水道法第11条(排水に関する受忍義務等)
・他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設 備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。
民法第209条から238条まで(相隣関係)
個々のケースによって、裁判所の結論はことなりますが、安心して使い続けられることは多いです。
ただ、近隣の方と長く遺恨を残したまま住み続けるのはお互いに気持ちが良いことではありません。当事者同士で話し合いで最善の方法を決めるのが良いでしょう。
中古戸建てを購入する際には、配管関係も気にした方が良いでしょう。隣地の土地を使用している、共有の私設管から引き込んでいる等の場合も多いです。
配管工事をする際には、共有者や隣地の承諾が必要になる場合もあるからです。このようなことは、中古物件の買い方などの本には載っていないこともあります。
1-3.建物の一部が隣地を越境している
建物の一部(屋根や出窓、庇など)が隣地に一部越境してしまっていることはあります。
建築当時から越境しているケース、家の建て替え時やリフォーム時に隣地境界にはみだしてしまったケースに分かれます。
建築やリフォームして隣地境界にはみだしてしまってから1年以内の越境部分に関しては、撤去に応じなければいけません。
1年を過ぎてる場合には、民法では損害賠償の請求のみでよしとされています。
撤去するのに足場の設置や工事費用など数十万円かかってしまうことがあります。
隣地の方にとって、損害が明確なものでないならば、協議をしてから次のリフォーム時や建て替え時に撤去する等の覚書を交わしておくのがベストです。
1-4.境界があいまい
境界があいまいな土地は密集市街に多いのです。特に古家がたち並んでいるエリアでは、境界が明示されていないこともあります。
中古物件を境界非明示で購入してしまうと、隣地との境界争いに巻き込まれてしまうことがあります。
これから売却をする方は、境界確定を行ってから売りに出した方が良いでしょう。不動産会社が土地家屋調査士を紹介してくれます。
敷地の面積や境界標の位置、立ち合いを求める隣人の数、権利関係等で境界確定の費用もかわってきますが、50万円から70万円が相場となります。
境界があいまいだと、建て替えの際に困ってしまう場合があります。
2.近隣とのトラブルや紛争を解決する方法
近隣との境界や越境トラブル、私道や土地のトラブル・紛争を解決するためには、両者の協議が必要なってきます。
トラブルに至った経緯や隣地の方の言い分・感情を理解せずに解決することは難しいでしょう。
場合によっては隣地の方への償金の支払い、または調停、訴訟による解決せざるをえない場合もあります。
一戸建ての場合、隣地とは長く関係性を持つ必要があるため、お互いの為にも良好な関係を築いたほうがメリットは大きく、話し合いでの解決が理想的といえるでしょう。
2-1.リフォームや建て替え
リフォームや建て替え工事をする時に一部隣地の土地をお借りして足場を組みたいという方もいるでしょう。
隣地と良好な関係を築いていれば、話がしやすいかもしれません。隣地の関係が良くない場合、挨拶を交わすだけの関係の場合、隣人が足場の承諾をくれないこともあります。
民法第209条(隣地の使用請求)
土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
どうしても隣地の方が土地を一部貸してくれなければ、裁判手続きをおこす方法をとることもできます。ただし、隣地との関係がより悪化、感情的になってしまう可能性もありえます。
隣地の方が土地を貸してくれない理由や経緯などを理解した上で不動産業者が間に入ることで、解決するかもしれません。
隣地の方が足場の設置を拒否している場合
・裁判所に提起
・建築計画やリフォーム計画の見直し
・不動産業者が隣地の方への交渉、相談
隣地の方が土地を貸してくれない経緯を理解されていない所有者もいます。特に売買で中古戸建てを購入した方に多いです。
敷地いっぱいにぎりぎりに建てられてる家は隣地の方からの印象は良くないです。
隣地の方にご納得いただくためにも、足場面積部分のお礼金や賃貸借費用をお支払して、はやめに解決するのも一つの手段となります。
2-2.建物一部が隣地を越境している、配管や電線が隣地を通過しているなら
隣人から越境建築や越境部分の取り壊しや是正、配管や電線の移設を求められる場合があります。
建物の一部が隣地に張り出している状態を越境建築、越境部分をいいます。故意によるものか、過失によるものか、また越境の状態によっては隣人の方が気づいていない場合もあります。
もし、隣地の方から越境建築の取り壊しや是正措置を求められたらば、その越境部分を収去しなければいけません。
しかし、越境部分が完成、建築されてから1年以上経過してる場合には損害賠償の請求のみをすることができるとされています。 もし、隣地の方から越境部分の収去を求められたならば、家のリフォームや建て替え時に境界から引っ込めること(撤去すること)などの覚書を交わして誠意をもって対応するべきでしょう。
不動産の売買においても、不動産仲介会社が事前に越境してる箇所を確認したならば、事前に隣地の方と覚書や念書を交わしておくこと(第三者に同内容を引き継ぐ)、買主に重要事項説明をしておかなければいけません。家の売却をする所有者からしたら、越境部分をつくらないようにしておくことが売買のトラブルを作らない上で大切なことです。
家庭の排水や生活配管に関しては、民法の他に下水道法によって秩序や基準が定められています。
配管や電線が隣地の下や上を通過していることがあります。隣地の方から、配管や電線の移設を求められることもあるでしょう。
民法第220条(排水のための低地の通水)
高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
民法第220条では、高地の土地所有者は低地である他人の土地を通過する権利を認めています。
また高低がない隣地の場合でも、下水道法で、隣接地を通過してもよい救済措置があるのです。(当該ページの1-2をご参照、下水道法第11条)
原則として、相手方に損害が一番かからない方法をとらなければいけなく、相手方が損失を受けた場合には補償する必要があります。
もし、隣地の方や近隣住民から配管の移設を求められた場合には、移設するだけでなく、ある程度の金銭を支払って和解で解決することもできます。
また袋地で囲繞地通行権を有する部分であるなどでも、生活に欠くことができない配管に関しては判例や法律でも、その設置を認められるものなのです。相手が強行的な態度をとってきても、裁判で負けることはないでしょう。
2-3.境界確定に協力してくれない
所有している不動産を売却する際に、境界確定に協力してくれない隣人の方がいると、売却するのに時間がかかってしまいます。
本来、境界確定をすることは土地の所有権をはっきりさせることにもなり、隣地の方にとっても悪い話では無いのです。
中にはハンコ代を要求してくる隣地の方もいるかもしれません。このようなことが起きない為にも、普段から隣地の方と良好な関係を築いておくべきではあります。
最終的には筆界特定の制度を利用すること、または境界確定の訴えをおこすことになります。
筆界特定制度
平成18年度より、筆界特定制度がスタートしました。土地の一筆ごとの境界を決定するための行政制度のことです。
実際には9か月から1年位、手続きを要する為の期間がかかるため、話し合いですませればベストです。
さいごに
所有している不動産の売却、土地の売却を考えているが、隣人や近隣とトラブルをかかえているため、安く売却することになってしまう方は多いです。
できれば、隣人トラブルを解決してから相場通りに売却するか、不動産業者に買取してもらったほうが良いかもしれません。
建て替えが難しい土地、隣人が境界確定に協力してくれないので売却が難しい土地、通行承諾や掘削同意が得られない袋地
これらの土地は安くなってしまうばかりか、多くの方が購入を敬遠してしまいます。
隣地とのトラブルを抱えている方はお気軽に当社までご相談くださいませ。隣地や近隣住民との交渉、解決、和解なら当社まで。