日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者の割合)は、平成30年時点で27.7%となり、超高齢社会に突入しています。
また、実家を相続した時の相続人の平均年齢も高くなっており、相続人にとって実家を相続することが負担となるケースは増えています。
相続した不動産を、自己居住用や投資用として自分の生活に役立てることができれば負担にはなりませんが、
相続人が遠方に住んでいて田舎の実家を相続した場合には、活用することは難しいでしょう。
所有してるだけで固定資産税の支払いや維持管理に労力がかかることもあり、負担を感じてしまうという方は多いのです。
不動産投資やアパート経営をするにも、賃貸募集や管理業務をする上で入居者や不動産会社との交渉もあり、時間や労力を多分に求められます。
誰しもが不動産投資を成功できるわけでもなく、退去や家賃滞納といった問題が発生するという当たり前のことを、理解する必要もあります。
そして、一番の問題は田舎の家に賃借人が付くかどうかです。
田舎の家は賃貸需要が低く、空室増加に頭を悩ますアパートオーナーも多いのです。
そんな田舎の実家を相続した時にとるべき選択肢は3つあります。
1.田舎の実家をどうする
相続不動産の売却は、相続人の数や親族構成・生活事情によって意見がまとまらないこともあります。
実家ともなれば、複数の相続人間では分割がしにくく、そうならない為には最善の選択肢を選びたいところです。
実家を相続した場合には、
実家を売却して現金化するか、賃貸募集をして収益を得るか、空き家のまま所有しておくか、この3パターンが考えられます。
①人に売却する(処分する)
②賃貸に出す
③空き家のまま所有しておく
また、実家を売却・処分するにしても、次のような検討が必要となってきます。
・どうやって不動産を売却できるかどうか
・誰に売ることができるのか
・売却金額は妥当であるか
・売却できなかった場合には、処分できるか
・空き家のまま所有していて、近隣に迷惑がかからないか
・年間の固定資産税や維持管理の為のコストはどれぐらいかかるのか
・相続人間で合意はできているか
不動産を処分したくても、簡単には処分できないのです。
不動産の相続放棄を行うにしても、手間やコストがかかってしまいます。
また、不動産を相続してしまってた場合には、いまさら不動産を所有権放棄することはできません。
③の空き家のまま所有しておくことは、最悪の選択肢です。
その理由は後述しますが、この選択肢を選んでしまっている方は非常に多いです。
①人に売却する(処分する)、又は②賃貸に出す
このどちらかを選ばなくてはいけません。
1-1.解体費用がない
空き家のまま所有していても近隣に迷惑がかかるとして、実家を売却する前に建物の解体を検討される方もいます。
家屋倒壊の恐れがあれば強風時や台風時に危険があるとして、自治体が所有者へ勧告、措置命令を出した事例もあります。
一般的な木造住宅であれば、坪3万円から4万円として、100万円以上解体費用がかかります。
加えて室内の残置物処分代なども含めると、土地を更地にするだけで200万円以上かかってしまうかもしれません。
但し、実家の売却費用で解体費用をまかなえないこともあります。
100万円以下の販売価格で売地として売り出しても、売れない田舎の土地は多いです。
そういう土地の場合には、建物を解体せずに、現況のままで売り出すことべきでしょう。
それに建物を解体してしまったら、翌年から固定資産税等が高くなってしまいます。
住宅用地の税金特例が受けられなくなるからです。
(参考:解体費用がかかる物件、現況のままで売却)
1-2.解体前の片付け費用
建物を解体する場合には、その前に室内の残置物を片付けないといけません。
不動産関連の書類だけでなく、遺産となるものや貴重品(現金、貴金属、生命保険関係の書類、ハンコ[実印や銀行印]、貯金通帳やキャッシュカードに加え、各種請求書など)が残されている可能性もあります。
遺品整理や室内の残置物処分を業者に依頼したら、少なくとも数十万円はかかってしまうので
出来る範囲で仕分けや整理、ゴミ出しを自分たちで行ったほうが安上がりです。
家庭用のゴミとして、ゴミの日に出せば回収してくれます。
業者に依頼すれば業者は産業廃棄物として処分をしなくてはいけなく、かなりの費用を支払わなくてはいけません。
30坪程の一戸建てで室内残置物の処分を依頼した場合には、安くとも30万円から40万円はかかってしまうでしょう。
室内残置物が大量にある場合には、50万円以上かかってしまうこともあります。
1-3.空き家 売却 相場
都心部や市街化区域であれば、相場がはっきりしています。
住宅需要があり、成約事例も多いです。相場に近い金額で売りに出せば、問題なく売れるでしょう。
しかし、田舎の家となると成約事例が少なく、不動産会社でも相場がわからないこともあります。
非線引き区域や市街化調整区域の物件に該当すれば、中々売れないとあきらめてしまう方もいます。
不動産会社に相談に行ったけど、『そこの地域の物件は、売れないよ。』と言われてしまった方も多いはずです。
家や土地を売るときの価格基準【公示地価/基準地価/路線価/評価額】
通常の不動産であれば成約事例や公示地価などを参考にしますが、田舎の実家であれば参考にならないこともあります。
それに相場にこだわってしまうと売るに売れなくなってしまいます。
建物の状態がボロボロであれば、売値にこだわらずに、うまく処分することを優先するべきです。
建物のリフォーム代は思ったよりもかかってしまうものです。
1-4.実家を処分、売却はできるのか
立地が良ければどんなにボロボロの建物だとしても簡単に売れるし
立地が悪ければ綺麗な家でも中々売れません。
不動産は立地が全てといわれています。
だからこそ、建物がボロボロだと致命的です。
相続した家の売れない共通点はあります。
それは、空き家にしてしまって、長年放置してしまうことです。
建物は傷みだしたら、あっという間に劣化していきます。
外壁や屋根に雨漏り箇所が発生してしまえば、すぐに応急処置や修繕をしないと、大変なことになります。
だからこそ、実家が空き家になった場合には、3年以内に売ることです。
空き家になってから3年以内は売りやすい期間です。
外観や室内が綺麗であれば、立地が悪くても値段次第で売れます。
築年数が経てば経つほど、建物の価値もなくなり、買い手もいなくなってきます。
メンテナンスや維持管理も大変なはずです。
それに、一定期間内に相続財産を譲渡した場合には税制の特例もあります。
下記のページもご参考くださいませ。
1-5.実家の処分費用はどれぐらいかかる
税金や草木の伐採・建物のメンテナンスなどで、年間の維持費用が10万円を超えているかたは多いでしょう。
実家が空き家になったまま活用しないのであれば、まさに負の財産といえます。
早いうちに売却、また処分をするべきでしょう。
一般の人や不動産業者に売ることが出来れば、処分費用がかかることはありません。
もしも、一般の人に売れなければ、不動産業者の買取りをお勧めします。
不動産業者の買取りが難しければ、最終的には自治体に寄付の相談をするしかありません。
自治体に寄付を出来たとしても、原則、境界確定をすませておくことや更地渡しが条件となりますので、
その為の土地家屋調査士に支払う報酬や建物の解体費用をあわせたら、数百万円かかってしまうことも考えられます。