古いアパート物件やテナント物件の建て替え、アパートの売却の相談をするために当社にお越しになられた方で
賃借人がついているため、どうすれば良いのかわからないと迷われてる方が多くいらっしゃいます。
古いアパートでも全戸埋まっていればいいですが、築年数が古くなってくると内外装や設備は老朽化しており
一度退去者が出てしまえば入居者付をすることはむずかしくなってきます。
中途半端に空室が発生している状態だと、家主にとって機会損失が発生しており、建て替えをしたほうが稼働率や収益率などの効率をあげられます。
ただし、借地借家法により、賃借人は強く保護されているため、簡単に退去してもらうことはできません。
賃借人がいる限りは、建て替えができない為、家主にとっては八方ふさがりといえます。
そこで、このページでは、家主が老朽化したアパート等を所有しているときに賃借人に退去してもらうことは出来るのか、また賃借人がついていたとしても売却することは出来るのか、
家主様にとって、参考となることを書かせていただきました。
1.賃借人を追い出す
所有しているアパート物件、店舗物件、一棟マンションから賃借人に退去してもらいたいとお考えの家主もいるでしょう。
賃借人を追い出したい理由として下記があげられます。
- 物件を建て替えしたい
- 自己の居住用として使用したい
- 高く売却するために、退去してもらいたい
- 家賃滞納者、トラブルを起こす入居者だから追い出したい
物件を建て替えるにしても、様々な理由があります。
賃貸マンションに建て替えたい方、店舗物件やビルに建て替えたい、自己の居住用として一戸建てに建て替えたいという方もいらっしゃるでしょう。
売却するにしても、老朽化したアパート等の場合には、賃借人がついていない方が高く売却できます。
家賃滞納者や入居トラブルを頻繁に起こす賃借人の場合には、立ち退き料がかからずに退去してもらうことはできますが、
そうでない賃借人や長年入居してくれてる賃借人の場合には、簡単に追い出すことはできません。
1-1.借地借家法
建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関しては借地借家法に定められています。
平成4年に借地借家法は施行されました。直近でいえば、平成23年に借地借家法が改正されています。
借地借家法の施行にともなって、旧の借地法や借家法、建物保護ニ関スル法律は廃止されました。
ただし、賃貸借契約を交わした時の法律が適用されるため、昭和の時代に借りられてからずっと契約更新されている場合には、契約更新にあたって旧の借地法や借家法が適用されます。
借地借家法では、家主は契約の更新を正当の事由なくして拒むことができないため、賃借人保護が前提となります。
もしも、賃貸借契約後に賃借人に退去してもらいたい場合には、定期建物賃貸借契約を交わすべきでしょう。
旧の借家法では定期借家制度はありませんでしたが、借地借家法では第38条で明記されています。
この定期借家制度は平成12年度に施行されました。
1-2.賃借人が家賃滞納をしている、入居トラブルを起こしている
一般の賃貸借契約を交わしている場合には、家主の都合で借家人を退去させることは難しいです。
しかし、借家人側が家賃滞納をしている、無断転貸や短期貸しなど、無断改築、入居規約を守らないといったトラブルを起こしている場合には、立ち退き料がかからずに追い出すことも可能です。
家主と借家人との間の信頼関係がされるような行為をおこされた場合には、契約解除が認められるからです。
しかし、家賃を1週間滞納した等の軽度の違反であれば、契約解除は認められません。
借家人が2か月から3か月以上家賃を滞納した時もしくは、しばしば支払いの遅延をすることで支払い能力がないと明らかである場合を除いて即契約の解除は難しいでしょう。
1-3.建物がボロボロの為、建て替えをしたい
建物の老朽化や建て替えの必要が客観的に明らかであるときは、賃借人に建物の明け渡しを求めるうえで正当事由になります。
築年数が40年から50年以上経ってるアパート、築年数不詳の木造住宅ですと、耐震強度もなく防火性も乏しく、危険な状態であることでしょう。
しかし、賃借人の住んでいる期間や事情等も考慮されますので、建物がボロボロというだけでは賃借人保護の見地からすると、問答無用で退去してもらうというのは難しいです。
立ち退き料の支払いや引っ越し先の手配をすることで賃借人の退去の同意を得るか、正当事由の補完をした上で裁判をして立ち退き請求を認めてもらう必要があります。
また建物がボロボロになっているので、一棟マンションやアパートに建て替えて収益を上げたいというのは家主の都合であって、
それは賃借人の都合ではなく、裁判上で立ち退きを認めてもらうのは難しくなります。
1-4.アパートを売却するために賃借人を出したい
築年数が古い収益物件、老朽化したアパート等の物件を売却するためには、賃借人がついていない方がベストです。
当社のような買取を行っている不動産業者や、アパート買取業者は、賃借人がついている場合には立ち退き費用を想定して買取価格を提示します。
入居世帯が多い場合には、全世帯の立ち退きの交渉を行うことは大変です。そこまで労力をかけて仕事をやってくれる不動産仲介業者は少ないでしょう。
現況のまま賃借人付きで買い取ってもらうのが良いでしょう。
ただし、入居世帯が少ない場合には、引っ越し先の確保や立ち退き料を支払った上で賃借人に退去してもらえれば、買取業者や投資家に高く売却できる可能性はあります。
2.立ち退き料を支払って、出てもらうには
借地借家法第28条では、家主から賃借人に対して立ち退き料を提供することで正当事由の1つになるとされています。
建物の老朽化により建て替えをしたい、家主が自己の居住用として利用したい等、もし裁判をするとなったら家主や賃借人の都合がそれぞれ考慮されますが、なるべくは賃借人の同意を得て、立ち退き料を支払った上で穏便に退去してもらいたいものです。
今日では、沢山の賃貸物件(マンション、アパート)や貸家が募集されています。審査がやさしい保証会社も沢山あるため、引っ越し先の確保は昔に比べたら、容易になっています。
賃借人の居住状況、家主が支払いできる立ち退き料など、賃借人に退去してもらうための課題は多くあります。
場合によっては明け渡しを求める労力やコストを考えたら現況のままで売却してしまったほうが良い場合もあります。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
2-1.立ち退き料の相場
立ち退き料の相場は無いようもので、明確な金額を出すことは出来ません。
賃借人の状況や事情、家主が立ち退いてもらいたい事情や状況、正当事由によって、明け渡しを求める根拠は変わってくるからです。
賃借人が30年以上も住んでいてその立地に慣れ親しんでいたり、引っ越し先の確保が出来ないことや賃借人の資力の問題などで明け渡し交渉をすることが難しくなってしまう場合もあります。
高額な立ち退き料を提供したとしても、正当の事由が足りないということで、立ち退きの請求が認められない場合もあるのです。
不動産業者によるアパートの立ち退き交渉の場合には、引っ越し先の初期費用の負担+引っ越し代の負担+家賃の◯か月分の負担
もしくは家賃の◯◯か月分といった形で立ち退き料の提示をすることがあります。
立ち退き料に関しては、借家権割合で計算する場合もありますが、賃借人の事情や状況によるため正しい計算をすることは難しいです。
入居者の都合によって、立ち退き交渉が出来るかどうかは変わってくるでしょう。
2-2.賃借人の追い出し方
アパートから賃借人を追い出す場合には、家主側の事情よりも賃借人の事情が考慮されます。
家賃滞納者やトラブルを起こしている入居者であれば、立ち退き料がかからずに追い出せる可能性は十分にあります。
ただし、長年居住されている賃借人、定期借家契約を交わしてない賃借人の場合には、賃借人保護を前提として、家主が立ち退きを求めるための正当事由が求められます。
賃借人によって、状況や立場もかわってくるでしょう。
- ちょうど更新の時期に引っ越しを考えていた大学生
- 同じ条件のアパートがあれば引っ越してもよいと考える独身男性の方
- 長年住んでいてその土地の人間関係が形成されているご高齢の方
- 子供の為に学区を簡単にうつせないファミリー層
裁判による解決でなく、立ち退き料の提示や引っ越し先の確保など賃借人の都合を考慮した上で交渉していくことが重要です。
2-3.収益物件を売る場合には追い出したほうが良いか
交渉してみないとわかりませんが、入居世帯の数や賃借人との契約内容、賃借人の状況や立場によっては
無理に明け渡し交渉をせずに、現況のまま不動産業者や投資家に買ってもらったほうが良いです。
開発計画をたててる不動産業者が高額な立ち退き料を提示した上で交渉を行っても、明け渡しが認められずに頓挫してしまった事例もございます。
現況のまま賃借人付きで買い取ってる不動産業者は多いです。
さいごに
収益物件やアパートの売却をお考えの方はお気軽にご相談くださいませ。
もしも、建売用地やマンション用地、ビル等の開発に向いている土地の場合には、立ち退きが成功しないと、家主や不動産業者にとっても機会損失がとても大きくなるものといえます。