不動産売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、売主は瑕疵担保責任を負います。
瑕疵とは
家を利用する上で、通常有すべき品質や性能を欠いてる状態のことをいいます。
雨漏りやシロアリ、土壌汚染、地中埋設物のような物理的瑕疵もあれば、
過去に事件や事故などがあった心理的瑕疵、
周辺に騒音や排気ガス等を出す工場がある環境的瑕疵、
建て替えが出来ない土地等の法的瑕疵があります。
築年数が古い中古物件(築古物件)の場合には、売主も瑕疵の有無を判断できないことがあります。
リフォームや建て替えをしない限り、建物内部の状態を確認できない箇所もあるからです。
築古物件は雨漏りや漏水、シロアリ等が発生していて全体的に腐朽している可能性も高いです。
そのような状態を修繕してから買主に引き渡す義務は本来、存在しません。
だからこそ、瑕疵担保責任を負担しない特約(瑕疵担保責任の免責)を交わすことが多いのです。
1.土地建物の瑕疵担保責任の免除
中古物件を売買する際には、重要事項説明書や売買契約書にて瑕疵担保責任の有無と期間を定めます。
売買契約の条件として、”土地建物の瑕疵担保責任の免責、境界非明示”とすることがあります。
築年数が古い中古物件や再建築不可物件では、一般的です。
建て替え前提で古家付き土地を購入する場合では、地中埋設物等の瑕疵担保責任の期間は3ヶ月から6ヶ月ほど設けることがあります。
建物を解体後に地中埋設物(コンクリートや浄化槽、古井戸、廃材など)が出てくれば、買主にとって想定外の撤去費用がかかってしまうからです。
瑕疵担保期間を過ぎてしまった場合や瑕疵担保責任を負担しない特約としてる場合には、
買主は売主に対して損害賠償請求をしても認められないでしょう。
1-1.引き渡し後にクレームを入れてくる買主もいる
個人間売買で瑕疵担保責任を負担しない特約をつけたとしても、引き渡し後にトラブルとなることは少なくないです。
引き渡し後に買主がクレームを入れる理由として、予想していなかった瑕疵を発見してから売主に対して不信感を持つからです。
実際に、心理的瑕疵(自殺や孤独死)等の事実を買主に告げなかったり、売主が故意に買主に瑕疵の存在を告げないこともあります。
民法第572条(担保責任を負わない旨の特約)
売主は、第560条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
このようなトラブルにならないを防ぐ為にも、売買契約書に付属するものとして物件状況確認書(告知書)を作成・交付することが有効的です。
売り主が把握している不具合の箇所や内容を告げている場合には、隠れた瑕疵(かし)とはなりません。
万が一、引き渡し後に瑕疵が見つかったとしても、売主が瑕疵の存在を把握していなく、売主に故意や過失も無ければ損害賠償義務等は発生しないでしょう。
(瑕疵担保責任を負わない特約が有効となります。)
裁判の判例では、瑕疵担保責任を負わない特約を交わしていたとしても売主の瑕疵を肯定したケースや否定したケースがあります。
築年数が古い中古物件の場合には腐朽や損耗等生じていることが一般的ですので、売主や不動産会社が買主にしっかりと説明をし、買主がそれを了解して取引をするというのが通常です。
しかし、瑕疵担保責任を負わない特約をもうけたとしても、細かなことにクレームをつけてくる買主は存在します。
1-2.売主の建物調査は義務ではない
不動産取引において問題となるのは、引き渡し後に瑕疵が発覚したときです。
買主が建物のリフォーム時に瑕疵を発見することが多いです。
売買契約前からの瑕疵が買主に明らかになっている場合には、担保責任は発生しません。
但し、前述したように瑕疵担保責任を負担しない特約を交わしたとしても、
不動産取引後に買主からクレームや損害賠償請求の訴訟を起こされることも考えられます。
“売主は事前に瑕疵の存在を知っていたんじゃないか”、と疑いをかけてくる買主もいるからです。
実際には、内部の木部の腐蝕まで売主が把握しているとは考えづらいです。
個人の売主に建物診断などの調査義務もないため、屋根や床下、土台等の腐朽、シロアリ等の被害が発覚したとしても、売主の故意・過失を立証することは難しいでしょう。
しかし、売主は買主に対しての不動産の説明義務は負います。
買主にしっかりと説明義務を果たしていることで、瑕疵担保責任を負担しない特約が裁判等で否定される可能性は低いでしょう。
1-3.建て替えを前提としない場合の居住用建物の売買
前述したように物理的瑕疵として、シロアリや雨漏り、漏水、木部の腐食、建物の傾きなどがあげられます。
中古マンションや一戸建て、アパートなどの売買において、安全性・危険性を欠いている場合には瑕疵が認められます。
しかし、建て替えを前提とする場合の建物の売買においては、新たな建物を建築することが想定されているため、
上記の瑕疵が見つかったとしても、瑕疵担保責任が否定される可能性は高いです。
建て替えを前提としない中古マンションや再建築不可物件は、気を付けて不動産取引をしないといけません。
再建築不可物件を売買する場合には、一般的には建築確認を取得することが困難であるため
瑕疵担保責任を負担しない特約をつけて売買をするか、または不動産業者に買取をしてもらうべきでしょう。
1-4.『隠れた瑕疵』かどうか
瑕疵担保責任を負担しない特約をつけて売買をしたとしても、引き渡し後に特約の無効を主張してくる買主もいるでしょう。
売主が瑕疵を知っていた可能性は高い、と疑ってくる買主もいるからです。
もちろん、売主に故意や過失があれば損害賠償請求も可能ですが、買主が売主の故意や過失を立証するなど法的判断も必要になってくるため
訴訟で解決することは買主にとっても簡単なことではありません。
1-5.仲介会社の説明義務
仲介会社にとって、再建築不可物件や築古物件などの不動産取引は注意をする必要があります。
築古物件は外観や内装から、建物の状態を判断できます。
また売主からも瑕疵の有無などの情報をヒアリングして、買主に説明する義務が存在します。
雨漏りやシロアリの被害、躯体の問題を軽視してしまうと、引き渡し後に仲介会社の責任を追及されることがあります。
売主が瑕疵担保責任を負わないことを買主に十分説明した上で契約締結をすることが紛争防止のために重要といえます。
1-6.業者買取りは安心
不動産業者が買主の場合には、土地建物の調査能力は一般個人に比べて有しています。
売主が知りながら(悪意)告げなかった瑕疵を除き、業者である買主が売主に瑕疵担保責任を追及することは難しいでしょう。
そういった意味では、不動産業者に買い取ってもらうことは、売主個人の方や仲介会社にとっても安心で楽な取引といえます。
また不動産業者が売主の場合には、瑕疵担保責任を負担しない特約を認められません。
2年未満の瑕疵担保責任の期間も認められない為、不動産業者が売主となっている物件を購入する場合には買主にとって安心といえます。