成年被後見人の不動産の売却

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施設に入ってしまった高齢者である親の不動産を売却したくても、売却できないことがあります。

例えば、親が認知症になっていて介護が必要な状態になっていれば、まずは成年後見の申立てをしなくてはいけません。

 

買い手がついて売買契約が成立したとしても、本人の意思能力がなく売買契約が無効になってしまった判例もあります。

本人の意思能力が低下しているものの、それを欠くとまで認められない場合であっても、高齢者保護の観点から売買契約を無効にした判例もあります。

 

親の判断能力がはっきりしていて本人が売買契約書に署名や捺印をできれば問題ないですが、そうでなければ成年後見制度を利用してから不動産の売却手続きをしたほうが良いでしょう。

すでに成年後見人となっているのであれば、裁判所の許可を得て、成年被後見人の代わりとなって不動産の売却をすることは可能です。

 

1.親が認知症であれば、勝手に売れない

親が認知症になってしまった場合には、不動産を処分・売却することは簡単にできません。

心配であれば、親が元気であるうちに不動産の処分や売却について親に許可をえておくことです。

 

親や親族が認知症になった場合には、親や親族の不動産を売るために時間がかかってしまいます。

たとえ、親が施設に入居するための費用や、親を介護する為の費用は多額にかかるとしても、成年後見制度を利用しなければ不動産の売却は認められないのです。

自己の財産を管理・処分できないほどに判断能力が欠けている方は、成年後見制度を利用して、不動産を売却する必要があります。

 

1-1.成年後見制度の利用

本人の判断能力が低下してしまってる場合には、相続問題や財産管理、不動産の処分などで経済的不利益を被ってしまうことが十分に考えられます。

成年後見制度

成年後見制度とは、精神上の障害や認知症などで判断能力が低下した人に後見人・保佐人・補助人をつけて本人の生活を支援する制度です。

判断能力が低下した、意思表示が出来なくなってしまった高齢者の方が経済的不利益を被ることのないようにする仕組みともいえます。

 

厚生労働省は、全国で認知症患者数が2025年には700万人を超えると発表しました。これから超高齢社会がさらに到来するのが確実です。

当社にも、老人ホームに入居している親の不動産の売却をしたいが、どのように手続きを進めたらいいのかという相談も増えています。

 

不動産の管理や売買契約等の財産管理に関しては、成年後見人等が、その権限の範囲で契約手続きを本人の不利にならないよう代わりに行うこととなります。

ただし、成年被後見人が所有する居住用不動産の売却等に関しては家庭裁判所の許可が必要となります。

 

下記のページもご参考くださいませ。

認知症になってしまった、実家を売れるかどうか【売買/売却】

 

1-2.成年後見の手続きをするには

成年後見などの申立ては、申立書の作成を行うことからスタートします。

各家庭裁判所によって、書式・必要書類の違いがあります。

東京家庭裁判所の書式は下記サイトよりダウンロードできます。

東京家庭裁判所 後見(こうけん)サイト

家庭裁判所に相談にいけば、必要書類や書式の書き方なども教えてくれます。

 

申し立ては本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官が出来ることになっています。

申立てに必要な書類や費用

・申立書

・申立事情説明書

・親族関係図

・本人の財産目録及びその資料

・本人の収支状況報告書及びその資料

・後見人等候補者事情説明書

・親族の同意書

・収入印紙代など(家庭裁判所HPをご確認くださいませ。)

 

・戸籍謄本(本人及び後見人等候補者)

・住民票 世帯全部、省略のないもの(本人及び後見人等候補者)

・登記されていないことの証明書(本人)

・診断書(成年後見用)、診断書付票

・愛の手帳の写し

申立てをおこなってから、2か月から3か月で成年後見人に専任された方が職務を行えるようになります。

 

1-3.成年後見人になる人

家族や親族が後見人となるパターン、又は弁護士や司法書士・社会福祉士などの専門職の方が後見人となるパターンに分かれます。

成年後見の申立てをおこない、推薦した後見人等候補者が裁判所から問題ないと判断されれば、家族や親族が後見人となるでしょう。

 

1-4.成年被後見人の居住用不動産の売却

財産管理をすることも成年後見人の職務です。生活資金捻出のた めの動産及び不動産の処分も、財産管理のうちに入ります。

後見人所有の居住用不動産につ いて売却・賃貸・増改築・抵当権設定などの処分を行う場合には、必ず家庭裁判所の許可が必要となります。

許可をとらずに処分をしてしまった場合には、その行為は無効となります。

 

居住用不動産を売却する場合には下記のような事情が無いと家庭裁判所の許可を得ることは出来ません。

・本人が老人ホーム等に入居する為の入居金や月額利用料が必要だから

・本人の生活費用のため

・本人がその家に戻る予定はなく、所有しているだけでも毎月維持管理の費用が発生してしまうため

 

 

不動産の売却の手順

不動産売却の手順

居住用不動産の売却の許可の申立てに必要な書類

・申立書

・収入印紙代800円、郵便切手代82円

・不動産の全部事項証明書

・不動産売買契約書の案

・処分する不動産の評価証明書

・不動産業者作成の査定書

 

複数の不動産会社に査定依頼をした上で、複数の不動産会社から査定書をもらっておきましょう。

 

 

1-5.非居住用不動産

非居住用不動産に関しては、後見人の責任で処分することができます。

ただし、被後見人にとって不利益な結果をもたらすことのないように適切な処分をしなくてはいけません。

後見人の財産管理には高度な注意義務が課せられており,後見人の不注意によって被後見人に損害を与えたときは損害賠償の責任が生じます。

 

ちなみに居住用不動産とは、“後見人が現に居住している,または,現在被後見人は居住していないが,過去に被後見人の生活の本拠として実態があるなど今後帰住する可能性のある居宅及び同敷地”のことをいいます。

非居住用不動産とは、それ以外の不動産のことです。

 

1-6.司法書士に面談や立会いをしてもらう

ご高齢者の方が所有している不動産の売却の場合には、慎重に対応することが基本です。

75歳から80歳以上のご高齢者の場合には、身内や親族の方が代理となって売却の相談に来られることが多いです。

不動産会社や司法書士は、所有者が高齢者の場合には、本人の意思能力に問題が無いかどうか、読み書きのレベルはどの程度か、ご家族の方に確認をするでしょう。

 

本人の判断能力がはっきりしていて、読み書きも問題なければ、後見手続きをとらなくとも売買契約をすることに問題はございません。

本人が病院や施設に入居しているのであれば、司法書士が病院や施設に出向き、本人と面談することで判断能力の有無等を確認します。

問題があるということであれば、やはり成年後見の手続きをおこない家庭裁判所の許可を得てから売却しないといけません。

 

1-7.被後見人が不動産を相続した場合

被後見人が不動産を相続した場合でも、後見人の職務として被後見人に代わって、不動産を適切に取得するよう活動する必要があります。

相続人が複数いて遺産分割協議等をする場合には、被後見人に代わって後見人が一切の事務を行う必要があります。

後見人は被後見人が不利益をこうむらない為にも、遺言がなされた場合でも遺留分の減殺請求をする必要があります。

ときには被後見人の利益を第一に考えて相続放棄・限定承認などをおこなう必要もありますし、他の相続人からの要望等があったとしても被後見人の為に適切に行動する必要があります。

また、相続税の申告や納付も後見人の職務となります。

 

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