不動産を売買したときに、建築基準法や都市計画法の制限について宅地建物取引主任士から重要事項の説明があります。
しかし、不動産売買の素人が僅か1時間から2時間の説明では売買契約書の内容を理解することは難しいです。
重要事項説明書の補足資料等を読むことで、建築基準法や都市計画法について理解を深めることが出来ます。
都市計画法の制限は建物の制限に関わる大事なことですので、不動産売買の当事者(特に購入者)は知っておかないといけません。
不動産売買をされる方はぜひ、こちらのページをご参考くださいませ。
1.地区計画とは
地区計画とは、地区の課題や特徴を踏まえ、住民と区市町村とが連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、その実現に向けて都市計画に位置づけて「まちづくり」を進めていく手法です。
市区町村は地区特性を生かしたまちづくりの実現にむけて、地区独自のまちづくりのルールを定めることが出来る「地区計画」の活用を推進しています。
地区によっては、木造の戸建て住宅や古いアパートが密集しており、オープンスペースや緑が少ないうえに、幅4メートル未満の道路もたくさんあります。
このような地区では、火災や地震が起きたときに被害が拡大しやすく、住民が安心して暮らせる地区とは言えません。
市区町村は、安心して住民が暮らせる地区を形成するためにも、それぞれの地区で地区計画や建築条例を実施しているのです。
都市計画法第12条では、都市計画区域について地区計画を定めることができるとしています。
都市計画法第12条4
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる計画を定めることができる。
1 .地区計画
2.地区計画等については、都市計画に、地区計画等の種類、名称、位置及び区域を定めるものとするとともに、区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
都市計画法第12条5
地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画とし、次の各号のいずれかに該当する土地の区域について定めるものとする。
地区計画内にある建物は建築制限等を課されることになりますが、その地区計画のおかげで将来的に土地の価値があがることも十分に考えられます。
1-1.地区計画はどこで確認できるのか
区役所・市役所の都市計画課の窓口で地区計画に該当しているかどうか、また近隣の地区計画も確認することもできます。
また、市区町村が都市計画情報インターネット提供サービスを公開しているのであれば、ネット上で地区計画を含めた都市計画に関する情報を閲覧することができます。
1-2.地区計画による制限内容
地区計画によって、下記のような制限をかけられることがあります。用途地域で定められた建ぺい率や容積率よりも厳しい制限をかけられることもあります。
そのために地区計画に該当している場合には、既存不適格物件になっていないかどうか確認することも大事なことです。
・敷地面積の最低限度
・高さの最高限度
・建ぺい率、容積率の最高限度
・壁面の位置の制限
・建築物等の用途の制限
(引用元:東京都都市整備局 地区計画とは)
1-3.建築協定との違い
建築協定は建築基準法第69条で定められています。地区計画と同じように、建物の制限をかけることができます。
建築基準法第69条 建築協定
市町村は、その区域の1部について、住宅地としての環境又は商店街としての利便を高度に維持増進する等建築物の利用を増進し、かつ、土地の環境を改善するために必要と認める場合においては、土地の所有者及び借地権を有する者が当該土地について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関する基準についての建築協定を締結することができる旨を、条例で、定めることができる。
建築協定のある区域かどうか確認するには、建築指導課にて区域台帳を確認する必要があります。
地区計画との違い
・建築協定に参加してなければ建築物の制限等の強制力は無い。(建築協定の締結には、土地所有者・借地権者の全員合意が必要)
・建築協定の計画主体は住民達(所有者)であり、その地区地域に合った建築のルールを住民達(所有者)自ら取り決めるもの。地区計画の計画主体は市区町村となる。
1-4.東京都の主な地区計画の内容
東京都の地区計画の内容は各市区町村のホームページで確認できます。
例えば、渋谷区では19の地区計画があります。(平成29年4月13日時点)
本町二丁目、三丁目地区計画はその内の1つです。
・渋谷区本町二、三丁目地区計画
面積:約11.9ヘクタール
地区計画の目標:清水橋交差点の周辺にあって利便性が高く、山手通りの拡幅等に伴ってまちの様相の変化が見込まれる当地区においては、「安全・安心に、いつまでも住み続けられるまち」「多様な都市機能が複合した、健全でにぎわいのあるまち」「周辺の住環境と調和した、沿道景観の整ったまち」の形成を図ることを目標とする。
A地区(6.3ヘクタール)、B地区(5.9ヘクタール)に分けて建築物の用途の制限、壁面の位置の制限、建築物の高さの最高限度、建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限、垣又はさくの構造の制限等をもうけています。
1-5.都市計画法に基づく制限
都市計画区域では用途地域や地区又は街区を定めることができ、それによって様々な建物の制限がもうけられることになります。
また、都市計画制限は、地区計画の区域内による制限だけではありません。
地区計画による制限以外にも、都市計画私設の区域内や都市計画事業の事業地内による制限がございます。
不動産の購入を検討されてる方は、都市計画法に基づく制限の内容をよく確認してから購入する必要があります。