土地の境界確認や境界明示、測量を行っておく【境界確定/紛争】

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1.土地や家を売るときに境界を明示する

自分の土地や住宅を売るときに、隣地との境界がはっきりしていない、境界標や杭が設置されていない、境界確認書にハンコをもらえない、、、という方はいらっしゃいませんか。

昔からの古い家や住宅が立ち並んでいる土地や密集市街では、14条地図も整備されていなく、測量図や境界標が無い、潜在的に境界トラブルをかかえている土地は少なくありません。

土地を売る、住宅を売ることになったときには、土地家屋調査士に測量や境界確定、立会の依頼を行うことになります。

 

1-1.公簿売買

公簿とは官公署が法令の規定に基づいて作成し常に備えておく帳簿のことで、不動産売買の実務上では不動産登記事項証明書や不動産登記簿を指します。

契約対象の地積の確定を公簿面積によるものなのか、実測面積によるものなのか、2パターンあります。

 

公簿売買とは、公簿面積(登記記録面積)により売買として実際の面積を計測せずに、登記簿謄本・公図・地積測量図などの資料を添付して取引をします。

中古戸建てやアパートであれば、公簿売買とするケースが多いです。また山林や別荘地、農地等だと測量費用の金額が高くついてしまう場合、区画整理済地などで十分に登記記録が信頼できる場合でも、公簿売買としてしまいます。

 

そして、公簿売買の際には、下記のような契約条項を入れておくのが基本です。

売主及び買主は本物件の対象面積を標記面積(A)とし、実測面積の間に差異が生じても互いに異議を申し立てないとともに、売買代金増減の請求をしないものとする。

 

1-2.実測売買

更地や古家付き土地など、建築や建て替え前提である土地を売りに出す場合には実測売買は多いです。

実測売買とは、実測面積により売買として、契約時もしくは引き渡し時までに実測面積を確定させて取引をします。

 

すでに実測済みの場合では契約時決済時にそのままの金額で売買することになりますが、まだ未実測の場合には引き渡し時までに測量や境界の確定を行い、測量面積と契約面積(登記面積)の差額をしっかりと精算することになります。

市街地や都心の土地を売るならば、実測をしてみたら1cmや2cmのずれが生じていた場合に、土地の価格に影響が十分にあるといえます。

 

また境界がはっきりしていない場合や、測量図が無い等の場合には、実測売買にしておいたほうが将来のトラブルを防ぐ意味で買主にとって安心して土地の購入を検討することができます。

 

1-3.地積更正登記をする

地積更正登記とは、登記記録の土地の面積と現況の土地の面積が異なる場合に、登記記録の土地の面積を現況の面積に修正する登記のことです。

※地積とは
1筆の土地の広さや面積のこと。

地積更正登記をする理由として、不動産売買をするにあたって土地の面積を確定させたい場合や銀行融資の条件が入っている場合、土地を分筆するにあたって地積更正登記が必要になってしまった等などがあります。

 

地積更正登記をするにあたって、境界確定測量が必要になり、官公署・隣接所有者の境界立会い、隣接地の方の捺印、印鑑証明書の添付などが必要となります。

この一連の手続きにあたって、2か月から3か月かかることもあります。

 

たまに隣地の方が境界の立会いや協力をいただけない場合もあります。

不動産会社や土地家屋調査士などが出向いても話にならない場合に、筆界特定手続きもしくは境界確定の訴えによる境界の確認の他ありません。

 

1-4.境界明示の方法

公簿売買の場合、売主および仲介会社は買主に案内もしくは販売する際に、境界標をもって隣地との境界を確認してもらいます。

境界標がない場合には、土地家屋調査士に依頼して、公図や測量図、現況の状況をもとに隣接地所有者の方々立会いのもとで境界標の設置、境界確認書の作成をすることになります。

 

境界の確認はしてくれたが、境界確認書に捺印をくれない隣人がいるかもしれません、その場合にはそれに準ずる図面の交付で買主に了承をいただく場合があります。

 

土地公簿用の売買の場合には、だいたいのケースにおいて下記の条項を売買契約書に入れることになります。

売主は、買主に対し、残代金支払日までに、土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示します。なお、境界標がないとき、売主は、買主に対して、その責任と負担において、新たに境界標を設置して境界を明示します。ただし、道路(私道を含む。)部分と土地との境界については、境界標の設置を省略することができます。

 

実測売買の場合、土地家屋調査士に依頼をして境界確定測量をおこないます。

現地の測量や隣接地関係者との立会、境界確認、境界標や杭の設置、境界確認書の作成や測量図等を交付してもらいます。

 

現況測量や仮測量(隣接地立会を求めないもの)に比べて、境界確定測量は以下の理由により年月が必要となる場合があります。

隣人と境界争いがあったり、隣人が海外に出張中や入院中で連絡がつかなかったり、隣地の共有者が複数いて話がまとまらなかったり、等のケースです。

 

土地実測用の売買の場合には、だいたいのケースにおいて下記の条項を売買契約書に入れることになります。

売主は、その責任と負担において、隣地所有者等の立会いを得て、測量士又は土地家屋調査士に標記の土地について測量させ、記載の測量図を本物件引渡しのときまでに買主に交付する。

売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、前項の測量図に基づく隣地との境界を現地において明示する。

 

 

1-5.土地家屋調査士に依頼する

土地の境界確認や境界明示は、その土地と隣接地の間に境界標があれば、境界紛争もなくスムーズに売却できることが多いです。

ただし、境界標が無かった時には注意しなければいけません。

公簿売買であって現況有姿の売買だとしても、売主は境界明示をする義務はあるからです。

 

境界標を復元する、設置する場合には、土地家屋調査士に依頼することになります。

この土地家屋調査士に依頼する場合には、売却目的であれば不動産会社から紹介してもらえるため、売却代金から精算してもらえます。

 

境界確定の費用は現地の状況や隣接地の方の人数、所在や敷地面積、境界点の数などによって、また土地家屋調査士によっても異なってきます。

 

2.地積測量図や境界標が無い

土地建物の査定をしてもらう際に、登記簿謄本や公図だけでなく、境界確認書や地積測量図の有無を営業マンから確認されることがあるかと思います。

ただし、過去に分筆登記された土地や地積更正登記をされていなければ、地積測量図が無い場合が有ります。

 

そして、境界標がない場合には、買主にとって将来的に境界紛争の可能性が十分にあるといえます。

現況と公図が一致していないことはよくあることで、公図は決して正確な図面とはいえません。また全国に地図混乱地域は多く点在しています。

 

※地図混乱地域とは

公図と現地が大きく異なる地域をいいます。このような地域では,道路・下水道整備等の 社会基盤の整備,固定資産税の課税等の行政事務に支障を来し,事業・住宅資金の借入れのための担保権の設定等の経済活動も阻害され,開発事業においても, 土地の境界確認に膨大な時間を要する等の弊害が生ずるおそれがあります。

 

登記簿、地積測量図、公図の読み方、取得方法

 

2-1.境界線がはっきりしていない

境界線がはっきりしていないとは、隣地との境に境界標が無かったり、法務局に地積測量図がなかったり、過去に隣地との境界の確認をしたことがないということです。

この場合、公図やその他資料(登記記録、測量図等)を基に、隣接地所有者と協議して境界を合意するのが基本です。

 

ただし、前述してますように公図は必ずしも正しいものでなく、明治時代に作成されたものが元となっているため、今と比べて昔は測量の精度も悪く、地域によっては現況と大きなずれが生じている場合もあります。

 

隣接地との境界標の設置費用や、境界確定費用は、隣人と平等に負担することが原則ですが、土地建物を売却するにあたってあなたが境界を確定させたい場合、一般的には全額負担して境界確定の協力を隣人にお願いすることになります。

 

境界確定がされるということは、当事者同士にとっては将来的に土地建物の売買や相続をする際には境界がはっきりすることでプラスにもなることから、多くの方は協力してくれるはずです。

但し、過去に隣人との間で少なからず遺恨があったり、行き違いがあると非協力的になりやすいことがあります。

 

隣人からすると、『以前、境界の確定をこちらがお願いした時には、協力してくれなかった』 『相続した子供には関係ないかもしれないが、以前所有してた方はゴミ掃除や町のルールに協力してくれなかった』 『以前、土地の一部を譲る話を真っ先にしてあげたのに、断られた、今さら都合が良すぎる・・・』

など、隣人からすると、昔の記憶がよみがえってしまって、境界確認やハンコを簡単に押してくれないことがあります。

こういう境界問題が感情の問題になってしまってることは、実はよくあることなのです。

 

 

仲介に入っている不動産会社の担当者が、隣接地の方にお願いや交渉をすることになりますが、結果的に判子代が発生することはよくあることです。

 

2-2.資料が登記簿と公図しかない

境界確定や境界標の設置をしたいが、登記簿謄本、公図だけしか手元にない場合もあるでしょう。さらに法務局には測量図もなく、他に境界確認書といった資料等もありません。

 

現況と公図が一致しなく、隣接地と境界位置の認識の共有ができていない場合には、個別の判断が求められることになります。

個別の判断といっても、登記記録、現況の状態、公図、占有関係、その他土地の形状等を総合的に判断したうえで、かつ、当事者のどちらかが境界の主張をゆずることがあるというのが実情です。

 

境界確定における裁判所の判決においても、公図は土地についての事実状態の把握を目的とするものであり、証明力は絶対でなく一つの証拠材料にすぎないと述べられています。

 

境界確認におけるポイント

・現地の占有状態・・・ブロック塀等

・登記記録・・・登記記録の面積と実測面積

・測量図や公図、建物図面等

・境界標や杭、境界石など

・当事者の主張

 

2-3.隣地との境界トラブルがある

境界確定をするうえで、何ら問題がなく当事者が境界の確認をおこなって合意できるのが一番です。

しかし、隣接地と境界トラブルがある場合には、境界を確定するまでに年月がかかる場合があります。

そして、境界トラブルにいたっている原因がすべて境界がきっかけとは限りません。境界に関係のない事柄に起因するケースが多いのです。

 

挨拶をしてないなどの小さなことから、ゴミの出し方、町内会の加入、生活音や騒音の問題などがきっかけとなって、相手に遺恨が残ってしまい、境界紛争に発展することがあります。

 

2-4.境界確定の訴え

隣接地と境界トラブルが有って、境界の確定を求める訴訟のことを「境界確定の訴え」といいます。

境界確定の訴えをおこすにあたって、証拠資料となるものはなるべく準備しなければいけません。

・法14条地図や公図
・地積測量図
・登記事項証明書(公簿面積)
・境界標の有無
・占有の状況等
・写真、航空写真等

 

平成18年に筆界特定制度ができてから、境界確定の訴えの申請が少なくなっています。

年度 境界確定訴訟の新受件数(東京)
平成24年度 409件
平成19年度 394件
平成18年度 617件
平成17年度 878件
平成10年度 761件
平成8年度 810件

境界確定訴訟の平均審理期間は1年4か月です。

 

司法手続きによる訴えとなるため依頼先は弁護士となり、時間だけでなくコストがかかるというデメリットがあります。

本人訴訟であれば、弁護士に依頼して訴訟をおこすのであれ、訴訟費用はかかってきます。

固定資産評価額が高ければ、訴訟費用も高く、弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかることになります。

 

土地の価値が高くないにもかかわらず、訴訟費用と弁護士費用で100万円以上かかってしまうのであれば、本末転倒になってしまうかもしれません。

 

2-4.筆界特定の制度

平成18年に施行された、簡易な行政手続によるものとして境界を確定するための制度です。

該当地の価格によって、筆界特定の申請手数料が変わってきます。

境界確定訴訟と比べて、低コスト、かつ処理期間として半年から1年とされており、境界紛争を防ぐ制度として期待されています。

対象土地の合計額の2分の1に5%を乗じた額 費用
100万円までの部分 10万円までごと 800円
100万円を超え500万円までの部分 20万円までごと 800円
500万円を超え1000万円までの部分 50万円までごと 1600円
1000万円を超え10億円までの部分 100万円までごと 2400円
10億円を超え50億円までの部分 500万円までごと 8000円
50億円を超える部分 1000万円までごと 8000円

 

年度 筆界特定の申立件数
平成23年度 2326件
平成22年度 2302件
平成21年度 2579件
平成20年度 2492件
平成19年度 2690件
平成18年度 2790件

 

2-5.境界非明示での売買

売主は、必ずしも境界を明示しないと、売買出来ないわけではありません。

もしも、一部の境界が確定できない場合には、売買契約書に特約を入れて説明を果たすことで一部境界非明示として売却することが出来ます。

 

それでも、境界が確定されていない土地や不動産は、買い手や購入希望者が敬遠してしまうことがあり、もしも境界トラブルを抱えている場合には、不動産業者が買い取るケースもあります。

 

 

さいごに

境界確定の訴えや筆界特定の制度は、時間がかかってしまいます。手続きや訴訟が終わることを待ちきれない方もいらっしゃるでしょう。

不動産営業マンが足を運んで話を聞いてみることで、隣地の方が頑なに境界確認を拒む事情や状況がわかるかもしれません。

 

訴えをおこさずに、トラブルなく境界確認の合意をおこすことが一番です。

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