生活保護を受給することになったが、『どのように賃貸物件を探したらよいのか』 不安になってしまう方は多いと思います。
また生活保護受給者の方の中でも、引っ越しせざるをえない事情が出来てしまって、『また物件探しをするが、うまく出来るかわからない』 という方もいるでしょう。
こちらのページでは、生活保護受給者の方が今の状況を理解してお部屋探しがスムーズにできるように、また家主やアパートオーナーなどが安心して生活 保護受給者に賃貸物件を貸してあげられるように、賃貸営業マンの私が、賃貸仲介の現場で経験したことを含めてお伝えさせていただきます。
目次
1.賃貸物件が見つからない生活保護受給者の賃貸状況
どこのエリアでも、生活保護受給者(予定者含め)が賃貸物件を探すのに、苦労をしてしまうのが現状です。
実際に東京都内では5万件以上の賃貸物件があるにもかかわらず、生活保護受給者の方がかんたんにお部屋を借りることができません。
不動産会社で対応してもらえないと嘆く方、身内や友人が代わりに物件を探しているがどこの不動産会社でも断られてしまう、ボロボロの物件しか借りられないと嘆く方は増えています。
1-1.生活保護について
日本国憲法第25条では、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとされています。また国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない…とも定めています。
この25条の規定に基づき、生活保護法が昭和25年に制定されました。
今日でも経済的に困窮している方は沢山おり、将来的に生活保護を申請する方、生活保護を受給される方は増えていくと思われます。
生活保護には8つの扶助の種類がありますが、このページでは主に住宅扶助について書いております。
・生活扶助・・・食費・被服費・光熱費等の日常生活に必要な費用が支給されます。
・住宅扶助・・・アパート等の家賃や引っ越し費用が支給されます。
・教育扶助・・・義務教育を受けるために必要な学用品費が支給されます。
・医療扶助・・・医療サービスの費用の本人負担がなくなります。
・介護扶助・・・介護サービスの費用の本人負担がなくなります。
・出産扶助・・・出産費用が支給されます。
・生業扶助・・・就労に必要な技能の修得等にかかる費用が支給されます。
・葬祭扶助・・・葬祭費用が支給されます。
1-2.家賃の上限、初期費用や引越費用の上限
東京23区全域と24市(羽村市、あきる野市除く)では家賃の上限が単身世帯だと53,700円ときまっています。
2人世帯であれば、64,000円、3人から5人世帯であれば69,800円、6人世帯であれば75,000円、7人以上の世帯であれば83,800円が上限がとなります。
また平成27年に床面積によって上限の規定が追加されました。6㎡以下だと38,000円、6㎡から10㎡以下だと43,000円、10㎡超から15㎡以下だと48,000円が上限となります。
管理費や共益費などは実費負担となります。
初期費用としては、敷金等は基準額の4か月分、更新料は基準額の1か月分が上限となります。引っ越し代については実額が支給されます。
つまり、敷金2か月、礼金2か月、仲介手数料1か月、保証会社1か月といった物件は上限をオーバーしているため、いくら審査が緩くても借りることができません。
ここまで平成28年7月時点の情報となります。ただし、東京都全体の規定上限や、区ごとの規定上限の変更があることもございます。
1-3.不動産会社が対応できない
多くの不動産会社は生活保護受給者のお部屋探しに対応できません。
生活保護受給者が審査通る賃貸物件、中々無いのが現状です…
まず、最初に福祉事務所に生活保護の相談や申請の手続きをしていただくことになります。生活保護受給の目途がたちそうになってから、不動産会社に相談にいって、営業マンからケースワーカーの方への確認をした後で物件探しが進むことになります。
おそらく、営業マンが希望エリアの管理会社や家主に1件1件、電話確認をとって入居相談をしていくため、不動産会社や営業マンにとって、かなり時間がかかる行動をとっていくこととなります。
もしも、お客さんが保証人たてられなかったり、受給理由や年齢によっては、1日かけても希望の物件が見つからないことがあります。もちろん、不動産会社や営業マンによって物件探しの対応力や営業力に違いはありますので、1社や2社断られたからといって、物件探しを諦める必要はありません。
1-4.エリアによってはお部屋探しが出来ない
東京都内でも、エリアによってはお部屋探しが非常に難しいのです。私自身の経験談として、練馬区や板橋区などでは生活保護可の賃貸物件は簡単に探せましたが、渋谷区や港区、中央区などの都心部では全く探せませんでした。
土地価格や家賃価格がまったく違うのに、家賃の上限規定が一緒なのは、私も理由がわかりません。
したがって、23区内でも、渋谷区や港区、中央区、千代田区、目黒区、新宿区といったエリアでは物件探しが非常に困難であるを考慮して、他のエリアで物件探しをする必要があります。
2.借主がうまく物件を見つけるために
賃貸物件の審査に落ちてしまい再度探しなおしたり、不動産会社に断られてしまったり、ケースワーカーの方に物件が認められなかったり、
物件探しにおいて精神的負担や肉体的負担がかかってしまいますよね。
生活保護受給者の方がうまく物件を見つけるためにも、その家族の方、友人の方が協力することで物件探しがうまくいきやすくなります。
しかし、そんな一方で『どこに物件探しの相談をしたらよいのかわからない』 『保証人がたてられないけど、保証会社ってなに?』という話をよく耳にします。
2-1.不動産会社を探す
渋谷区で探す場合には渋谷区の不動産会社で、板橋区で探す場合には板橋区の不動産会社、成増駅周辺で探す場合には成増駅の不動産会社に行かれてみることをおすすめします。
不動産会社はそのエリアの物件情報力につよいことがあり、探しているエリアから遠い不動産会社に依頼すると、物件が見つかるまで時間がかかることもあるのです。
また不動産会社に2社から3社は足を運んでみて、駅前の賃貸専門の不動産会社もしくは地場(地域)の不動産会社にも行ってみましょう。売買系の不動産会社だと、賃貸物件探しを断られる可能性が大です。
2-2.ケースワーカーとの連携
営業マンはかならず、物件探しするにあたって受給証明書等の確認やケースワーカーの方への電話確認をおこないます。
相談してるケースワーカーの方に事前に不動産会社の情報をつたえておきましょう。
私が生活保護受給予定の方を担当させていただいた時には、受給証明書がないため、ケースワーカーの方に電話確認を行って、受給決定開始までの状況や日程を確認しながら、賃貸物件の契約や入金、鍵渡しの手続きを行っていました。
2-3.保証人の有無
なるべく保証人がいたほうが、えらべる賃貸物件の量が増えます。
家主や管理会社によっては、保証人がたてられれば審査OKします、という条件付きで入居の承諾をとれる場合があるからです。
また保証人にとっても、家賃は代理納付という形をとることで、保証人となるリスクが少なくなるため、ご家族の方や親戚の方は積極的に保証人になってほしいものです。
しかし、生活保護受給者の方の中には、保証人でなく緊急連絡先ですら家族や身内に頼めないという方もいます。そうなってくると、物件探しは困難になることが予想されます。
3.家主向けの生活保護者向け賃貸募集
所有しているワンルームマンションやアパート、一戸建ての入居者付けに困っていませんか?
実際に数か月入居者がつかなく、何とかしたいが、築年数も古くなってきたし、手放そうか迷っているという家主やオーナーは多いものです。
入居者がつかない理由としては、家賃が相場より高い、周辺物件に比べて機能や設備が劣り決め手に欠ける、入居者募集をしている管理会社の対応が悪いなどが考えられます。
そこで、家主や管理会社の方が生活保護者の方にも積極的に賃貸の募集を知らせることで、空室リスクを解消できるかもしれません。
3-1.代理納付
家主や管理会社の方が入居審査を緩くするうえで、一番気になることは家賃滞納リスクです。
フリーター勤務の方や自営業の方、水商売勤務の方は審査に落とされやすいです。
しかし、生活保護の方は、自治体によっては家賃の代理納付制度があります。家主からしたら、毎月決まった日に必ず家賃の振り込みがされるため、生活保護受給してる方だからこそ、安心して物件を貸せます。
また生活保護受給者によっては、引っ越しをせずにずっと更新される方も多いため、あわせて空室リスクや閑散時の退去リスクを避けられます。
3-2.管理会社を決めておく
家主のほうから物件管理を依頼している管理会社に、生活保護の方の審査も相談にのるということを伝えておきましょう。
家主によっては、保証人がいれば相談可、代理納付があれば相談可、保証会社の審査が通れば相談可、受給理由や年齢によっては相談可などといった条件付きで募集してる方もいます。
もしも、空室に悩んでおられるのであれば、不動産会社や管理会社に賃貸募集の相談をしたうえで、うまく賃貸経営をおこなっていきましょう。
さいごに
これからは賃貸物件を探す方は
1、福祉事務所にいってケースワーカーの方に相談をする
2、不動産会社2社から3社にいって相談をする
3、身内や親戚の方は物件探しに協力してあげる・・・これが一番大事かもしれません。